突然ですが、2023年10月に全国一斉に貸切バス料金が約3割程度の値上げとなりました。
その前の2023年4月以降、バスガイドの費用が全国どこでも約2万円だったのが3万円に順次値上げとなっていました。
新幹線や航空券の団体は徐々に取れにくくなり、航空券においてはダイナッミク・パッケージなどで日々料金が変わるため、
お客様への見積もりも概算でしか出せない状態です。
コロナ禍で多くのドライブインが閉店となり、多くのホテルや旅館も従業員不足のため昼食を廃止、
団体で取れる昼食場所が大幅に減少ました。
旅行会社を取り巻く環境は日々変化し、そのスピードは今までとは比べ物にならないくらい早いものになっています。
既存の旅行会社が悪戦苦闘する中、旅行業界には今までにないくらい異業種からの参入があります。
多くの既存の旅行会社と「これから旅行会社は儲かる」という新規参入者の違いを
”これから旅行会社を起業するメリット&デメリット”としてまとめてみました。
目 次
メリット
今から旅行会社を起業するメリットは大きく4つあります。
それぞれ、詳しく説明します。
古い旅行会社の頭は固い
まず、既存の旅行会社がライバルとなり得て、ノウハウや顧客も持っていることから新規参入企業にとっては脅威と感じられることもあるかと思います。
しかし、多くの既存旅行会社では高齢化が進んでおり、「メールも苦手」というところも少なくありません。
そして、そういった旅行会社では「ネットに客を取られた」というばかりで自分でネットからの集客をここと見ることをしていません。
更に、下記の2点にも注目してもらえればと思います。
団体旅行が戻ることを待っている旅行会社がまだまだ多い
コロナ以前から大型団体の小型化が進んでいましたが、それでも団体旅行はありました。
社員旅行や町内会旅行、各種組合や仲良し会などの団体旅行もありますが、これらはコロナ禍で一変します。
コロナ禍で旅行を止めて、近くのレストランやホテルでの宴会に変えているところが増えています。
この流れはコロナ明けといわれる今でも大きくは変わりません。
確かに2023年春以降、多少団体旅行は盛り返してきたと言えます。
はっきりとしたデータはないですが、肌感覚で各種団体旅行はコロナ前の3割程度でしょうか。(修学旅行などの教育旅行を除く)
私の中では団体旅行は今後戻って来てもコロナ前の5割程度と考えています。
ただでさえみんなと一緒に旅行に行かなくて良くなりホッとしている社員さんたちが一定数おり、
面倒な旅行の手配や旅行会社との交渉など無くなり、経費削減にもなっていた。
その上、今は人件費上昇、その他物価も高騰しなかなか旅行どころではないといった会社や団体も多いことでしょう。
儲かっている会社でも、旅行券を配り各自で家族などと旅行に行って、というところもあります。
こんな状況を無視して、「来年には団体旅行も戻ってくるだろう」と期待している旅行会社は意外に多いです。
逆に団体旅行の旨味を体験していない新しい旅行会社なら違った視点での取り組みがしやすいです。
着地型旅行に目を向けていない
小規模な旅行会社は今まで団体旅行を取ることを主としてきました。(一部特殊な旅行会社は除く)
理由としては、1人の旅行を企画手配するのも、100人の団体旅行を企画手配するのも手間はそれほど変わらないにもかかわらず、
利益は大きく異なるからです。
大型団体を送客する方が、土産物屋、昼食場所、宿などの受入施設にもいい顔ができます。
値引きや送客手数料のアップも望める場合がありました。
こうした数の力を知ってしまってる既存の旅行会社からすれば、
5人や10人で半日観光をするような着地型旅行には目が向くはずもなく、
「どうせ、そんな小さなことをしても儲からないだろう」と思われ、
具体的な利益勘定すらされず、取り組む気のないところが多いです。
新しいものに取り組むことに億劫になっていることもあります。
まだまだ着地型旅行はこれから伸びしろがあります。
既存の旅行会社がやり始める前に、仕掛けることができます。
固定概念にとらわれずに行動できる
「古い旅行会社の頭は固い」でお話しましたが、既存の旅行会社はどうしても固定概念が付きまとい、
この新しい時代にもなかなか変革できずにいます。
これから起業される旅行会社はこれら固定概念にとらわれることなく、新しいことにどんどんチャレンジすることができます。
もう既に、
旅館などの宿泊施設が旅行会社を当てにせず、自社で旅行業の免許を取り自地域をめぐるツアーなどを造成され集客を始められています。
海外の方が勉強されて、旅行業登録を取り、自国のお客様を呼び込んでいます。
レンタサイクルの会社が旅行業を取り、サイクリングツアーを開催されています。
本来は既存の旅行会社が介在してできる旅行商品もどんどんこうした新規の旅行会社が取り組んでいます。
小さな資金からでも始められる
皆さんはもう当たり前に思われていることと思いますが、
2018年以前は地域限定が無く、第3種旅行業も募集型企画旅行はできませんでした。
募集型企画旅行を組めるのは第2種旅行業以上のみで、
基準資産や保証金などのハードルが高くできるのは一部の旅行会社に限られていました。
法律改正により、2018年度より、地域限定や第3種でも一部の募集型企画旅行が主催できるようになり、
企画力によりお客様を集客することができるようになりました。
詳しくは下記にて、(出典:観光庁ホームページより抜粋)
インバウンド需要
コロナが明けてインバウンド需要はすっかり回復した感じがあります。
統計的にも10月にはコロナ前の2019年の実績を上回る入国者数とありました。
これでもまだ中国からのお客様は少ない状態です。
今後は更にインバウンド需要が高まることが容易に想像できます。
(出典:日本政府観光局訪日外客統計 ホームページより)
観光政策
2018年に旅行業法が大きく改正され、地域限定旅行業や第3種でも一部募集型企画旅行ができるようになったのには訳があります。
観光立国を目指す我が国は、様々な施策を打つことで、国内旅行の需要喚起、インバウンドの取り込みを行ってきました。
それらが功を奏して、インバウンド需要が高まり観光業は大いに盛り上がりました。
しかし、観光客は一部の主要な観光地に集中し、観光公害や地域過疎化を生みました。
そこで、観光客を一極集中させず、地方へ流すために目を向けられたのが「着地型旅行」でした。
地方の旅行会社にその地を魅力を伝えてもらい、集客することで地方へ観光客を誘導し、地方を盛り上げようというのが狙いです。
既存の旅行会社はなかなか着地型旅行に目を向けないので、
新しく地域限定旅行業や第3種でも一部募集型企画旅行ができるようにしたと思われます。
そして、今でもなお観光公害、一部の観光地への観光客の集中は続いている為、
今後も着地型旅行に関する施策は引き続き様々な手が打たれていくことと思われます。
色々と名前を変えては各地に補助金がおりてきています。
行政と共に手を組みツアー造成などをすることで、行政がプロモーションをしてくれる場合もあります。
これらをうまく利用することで、自社のブランディングや集客に活かすことができます。
デメリット
デメリットとしては、メリットの中でお伝えしたことの裏返しとなるものが多いです。
具体的にはここでは3点を挙げています。
各所手配先において従業員不足が深刻
まず筆頭に挙げられるのが、深刻な人手不足です。
コロナ禍で観光業は大きな打撃を受け、従業員が離れてしましました。
一度失たものは大きく、なかなか戻ってきません。
特に顕著なのは下記になります。
バス・タクシーの乗務員さん。
バスの乗務員さんは運送会社のトラックに乗っている方が実入りが良いらしいです。
タクシーの乗員さんはもともと高齢化が進んでいた中でコロナ禍で辞められた方が多いと聞きます。
どこも、バス・タクシー自体はあるが、運転手がいないので動かせない、と聞きます。
宿泊施設の仲居さん。
コロナ禍で一旦違うお仕事に就かれると、もう戻って来られないようです。
また、他の業種でも人材不足の為、わざわざ仲居さんになりたくて働きに来る方が少ないとのことです。
宿泊需要はあっても、お世話ができない為に全てのお部屋を埋め、満室にすることができない宿泊施設も多くあります。
料理人さん。
特に大型のドライブインや宿泊施設では、料理人さんが辞めてしまい料理の提供ができず廃業になったところもあります。
廃業まで行かなくても、仲居さん・料理人さんが少ない為に昼食の提供を止めている施設は少なくありません。
上記の理由により、
バス・タクシーの手配が難しくなってきています。
特に、「既存の旅行会社さんが優先で、今までお付き合いが無かったところには・・・」という会社もあります。
宿泊施設も、「インバウンドでいっぱいで・・・」と断られることがあります。
団体旅行での昼食施設を探すのが大変になってきました。
国内団体旅行需要の回復の遅れ
これから旅行会社を起業しようと思われる方で「国内の団体旅行をバンバン取ってやるぞ!」という方は少数かと思いますが、
団体旅行は今後もそれほど増える気がしません。
但し、旅行自体が減るのではなく、小グループ旅行や個人旅行が相対的に増えてきている感じがします。
これからは個人客を集めたツアーの時代になっていくのかもしれません。
国内団体の小規模化
こちらも「国内団体旅行需要の回復の遅れ」で述べた通り、大型団体の小型化、小規模化が進んでいます。
1団体の旅行での収益は減り、多くの旅行を手掛けないと依然と同じ利益が出ない仕組みになってきています。
既存の旅行会社からすれば、手間が増えるイメージですが、
新しく旅行会社をされる方なら、以前を知らないのでそのまま取り組めるのではないかと思います。