旅行会社として知っておくべき自然災害時の取消料について

日本では、いえ、日本だけでなくとも豪雨、台風、地震など自然災害と呼ばれるものは後を絶ちません。

これらは突然やってきて、とんでもない甚大な被害をもたらすこともあります。

被災された皆様へはなんとも言葉が出ませんが、一日も早い復興を祈っております。

 

さて、旅行業界でもこれらの自然災害では毎回かなりの被害に遭っております。

ひとたび自然災害が発生すると取消や延期、急な方面の変更が相次ぎます

これらは急を要し、また手間もかなりかかりますが、この部分ではなかなか利益は出ません。

利益が出るどころか、あるはずの旅行が無くなり、売上も吹っ飛ぶことになります。

 

「旅行業は平和産業」とはよく言ったもので、世界が平穏、平和でないと「旅行にでも行こうか」とならないものです。

世界中が平穏で、紛争もなく、政治的にも安定していて、どこの国に行ってもウエルカムな雰囲気。

なんてことで過ごせれば旅行業界ももっともっと盛り上がると思います。

 

弱音ばかりいっていられません。

今回はそんな自然災害の際、取消料はどう扱われるかについてお話します。

 

「自然災害で旅行取消の場合は取消料はどうなるの?」について

まず初めに、自然災害の際の取消について、あらかじめ明確な規定はありません。

えっ!と思われた方、恐らく約款をよくご存じですね。

「標準旅行業約款」によると、募集型企画旅行の部、受注型企画旅行の部、共に第4章契約の解除、第16条旅行者の解除権に次のように書かれています。

2、旅行者は、次にあげる場合において、前項の規定にかかわらず、旅行開始前に取消料を払うことなく募集型(受注型)企画旅行契約をかいじょすることができます。

三、天変地変、戦乱、暴動、運送・宿泊機関等の旅行サービスの提供の中止、官公署の命令その他の事由が生じた場合において、旅行の安全かつ円滑な実施が不可能となり、又は不可能となる恐れが極めて大きいとき。

しっかりと書かれているのでは?

と思いますが、いざ台風が日本に接近してきたとして、お客様が「不安だから取り消したい」とおっしゃられた場合を考えてみましょう。

・例えば京都旅行だったとして、台風の進路は京都にはなっていません。

・まだ一週間先のことで、どうなるかわかりません。

・台風は韓国にそれる可能性も。

などの条件だったら上記の「旅行の安全かつ円滑な実施が不可能となり、又は不可能となる恐れが極めて大きいとき」に当てはまるのか?ということです。

明らかに旅行の予定日にその地域に警報が出ていれば、間違いなく上の条件に当てはまりますが、まだどうなるかわからない段階では誰も判断できません。

もしくは地震でも、札幌に地震発生だったとします。

お客様は旭川と、富良野地域への旅行でその地域は被災しておらず、飛行機も普通に飛ぶ予定。

しかし、お客様からすれば、「北海道で地震があったので、怖い。旅行取消を!

といわれれば、どうでしょう?

心情的にはよくわかります。

いつ、札幌の近くでまた地震があるかもわかりません。

不安なので当然取消でしょう。

上記の2例で台風直撃、警報が出たらもちろん約款通り取消料なしで取消。

札幌に地震で、直後に札幌に行く旅行なら約款通り取消料なしで取消となります。

これならわかりやすですよね。

 

しかし、多くの場合、上記のように「まさにその時、その場が天変地変」ではなく、それに近い、又はそうなるかも?という状態です。

 

今までにあった対応方法

「まさにその時、その場が天変地変」ではなく、それに近い、又はそうなるかも?という状態の場合でも、今までの慣例でほぼどこも取消料なしでの取消となります。

つまり、お客様へ全額返金となります。

宿にも、交通機関にも食事場所などにも連絡を取りこの条件を飲んでもらいます。

もちろん、旅行会社としての今までの手間、手数料も取れません。

厳しいようですが、これが現実で、お客様理由でないのでお客様にしても行きたかった旅行が行けなくなるわけですから誰が悪い訳でもなく、仕方ないですね。

ただ条件として、信頼できる機関や政府が警報を出すなり外出禁止や避難勧告を出すなり何らかのアクションがあって初めて”取消料なし”となります。

例えばまだ台風が来ていなく、進路も定かでない時にお客様より「台風が来そうなのでキャンセルしたい」と連絡があった際は”お客様都合の取消”となりますので、通常の取消料を頂くことになります。

 

この微妙な違いでお客様にお叱りを受けることもありますが、仕方ありません。

何か取り決めをしておかないと、何でも取消料なしでの取消となり、旅行会社のみならず、宿泊業者、運輸業者、昼食場所などの立ち寄り施設、すべての業者が困ることになります。

自然災害による痛手を覆う旅行業の現状

自然災害にが起こると被災地以外にもこうしていろいろなところで影響が出ます。

旅行業界が少しでも救われているのは粗利ベースでゼロ以下にはならないという点です。

ホテルや旅館のように大きな資産を持たないので人件費やその他少しの固定費はかかりますが、旅行の催行が減ったところで売上がマイナスにはなりません。

ホテルでお客様が来なければいきなり赤字となります。

飲食店でも食材など仕入が既に発生しているものはいきなり原価割れとなってしまいます。

仕入れがあるところ、固定費がかさむところは大変です。

災害後

また、自然災害の後は必ず復興の声が上がってきます。

その際には復興支援策として必ず観光支援が付いてきます。

これらは例えば、「北海道の観光復興支援なら北海道2泊以上のツアー催行でお一人様2万円の補助が付く」などという支援策が出てくるはずです。

熊本自身の際もそうでした。

これらの支援策により、また旅行に行ってもらえる方が戻ってきてくれます。

今や旅行業は色々な業種と連携した基幹産業です。

必ず復活します。

起こってしまった災害は仕方ありませんが、復興の機運を逃さないことが大切です。

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