旅行業を始めるとき、多くの方がまず悩むのが「法人にすべきか、個人事業主で始めるべきか」という点です。
旅行業法では、どちらの形態でも登録は可能ですが、選択によって税務、資金調達、信用度、事業運営の柔軟性などに違いが生じます。
本記事では、私が旅行会社をゼロから立ち上げた経験と、実際の業務で得た知見を交えて、それぞれのメリット・デメリットを丁寧に解説します。
目 次
1. 旅行業法上の基本条件は同じ
まず押さえておきたいのは、旅行業法に基づく登録条件自体は、法人でも個人事業主でも基本的に同じという点です。
必要な条件は以下です。
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旅行業務取扱管理者の設置(国家資格保持者)
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営業保証金または弁済業務保証金分担金の供託
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営業所ごとの登録
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必要な帳簿や契約書面の備え付け
つまり、「法人だから有利」「個人だから不利」ということは旅行業法上はありません。
2. 個人事業主として始めるメリット・デメリット
メリット
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設立コストが安い
開業届を税務署に提出するだけで事業開始できます。
定款認証や登記費用も不要です。 -
意思決定が速い
自分一人の判断で動けるため、商品企画や販促方針を即座に変更可能です。 -
廃業が容易
法人解散より手続きが簡単で、費用もかかりません。 - 経理も比較的簡単
おおよそ粗利800万円程度までなら税法上のメリットもあります
デメリット
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社会的信用度が低い
一般的には大手取引先や行政案件では、法人格の方が信用されやすい傾向があります。
私の経験では、行政との取引や、大手の会社との取引でも個人事業主でそん色なく仕事をさせて頂いています。 -
節税効果が限定的
所得税の累進課税が適用されるため、利益が大きくなると税負担が重くなります。 -
事業承継が難しい
個人事業は事業主が変わると契約関係もリセットされることが多いです。
3. 法人設立のメリット・デメリット
メリット
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信用力の向上
一般的に企業や行政からの受注、BtoB旅行契約などで有利といわれています。
弊社は個人事業主ですが、不利を感じた経験がありません。 -
節税の選択肢が広い
役員報酬や経費計上範囲の活用により、所得分散が可能になります。 -
事業承継や売却が容易
株式や持分を譲渡することでスムーズに移転可能です。
デメリット
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設立・維持コストが高い
登記費用、定款認証費用に加え、毎年の決算・申告コストがかかります。 -
事務負担が増える
法的書類、株主総会、取締役会議事録などの管理が必要です。 -
赤字でも税金がかかる
法人住民税均等割など、利益がなくても発生する税があります。
4. 資金調達と保証金制度の観点
旅行業登録には、営業保証金(第一種は7,000万円、第三種は300万円など)または弁済業務保証金分担金の供託が必要です。
法人・個人事業主どちらでも負担額は同じです。
1. 責任の範囲:最大の違いは「有限責任」か「無限責任」か
融資における最も根本的な違いは、返済不能に陥った際の責任の範囲です。
- 法人:有限責任 法人は設立者個人とは別人格として扱われるため、会社の債務は会社の資産の範囲内で返済するのが原則です。つまり、社長個人の資産を返済に充てる義務は原則としてありません。これを「有限責任」と呼びます。ただし、中小企業の融資では、経営者が連帯保証人になることを求められるケースが多く、その場合は実質的に個人も返済義務を負うことになります。
- 個人事業主:無限責任 個人事業主は、事業主個人の資産と事業の資産が一体と見なされます。そのため、事業の債務は事業の資産だけで返済できない場合、事業主個人の預貯金や不動産など、すべての資産をもって返済する義務があります。これを「無限責任」と呼びます。
この責任範囲の違いから、事業が立ち行かなくなった際のリスクは、法人の方が限定的であると言えます。
2. 審査の視点:信頼性の見られ方の違い
金融機関が融資の審査を行う際、法人と個人事業主では、その信頼性の見られ方に若干の違いがあります。
法人と個人事業主のどちらが融資を受けやすいかという問いに対して、明確な答えはありません。
日本政策金融公庫などの公的金融機関では、法人か個人事業主かで審査に有利不利はないと明言しています。
以下の表は、それぞれの特徴をまとめたものです。
5. 集客・マーケティング面での違い
集客・マーケティング面において、法人・個人事業主の違いを感じたことはありません。
一般的に、法人格の方が営業がしやすいというイメージがありますが、個人事業主だからと断られた経験はありません。
営業は個々人の能力であり、法人・個人の違いではないように思います。
6. どちらを選ぶべきか?
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資金規模が小さく、まずは小さく始めたい場合 → 個人事業主
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将来的に大きく儲けることを考えた場合 → 法人設立
起業初期は個人事業主でスタートし、売上や取引先の拡大に合わせて法人化する「段階的アプローチ」も有効です。
まとめ
旅行業では、法律上は法人・個人事業主どちらでも同じ条件で登録可能ですが、信用力、資金調達、税務メリットなどを総合的に考えると、目指す事業規模や顧客層に応じて選択するのが最適です。
弊社の場合は当初より、ずっと個人事業主でやってきております。
個人事業主ということで、一番問題になったのは、新規雇用の際くらいです。
やはり、リクルーターからすれば法人格の方がよく見えるのでしょう。
これも、いざ入社すれば同じだと思います。
様は何人雇用しているか、どれだけ従業員のことを思っているかではないでしょうか?