「こんな旅行会社を探していた!」と言わせるコンセプト設計

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旅行業をこれから始めようとお考えの皆さま、旅行会社を起業してみたが、なかなかうまく運営できていない皆様、私は小さな旅行会社「旅行企画 萬転(まんてん)」をノウハウも顧客もゼロから立ち上げ、試行錯誤を重ねながらここまで事業を育ててまいりました。

このコラムでは、起業初期の一番大事なポイントとも言える「コンセプト設計」についてお話しします。

なぜ「コンセプト」が重要なのか

旅行業は「商品」と「サービス」が混在する特殊な業種です。
そして、旅行そのものは目に見えない「体験」を売るビジネス。
だからこそ、「誰に、どんな旅行を提供したいのか」を明確に言語化し、お客様に伝えることが何より大切になります。

そのときに役立つのが「コンセプト設計」です。
これがしっかりしていないと、どんなに良い企画を作っても、誰の心にも響かない“売れない旅行”になってしまいます。

よく聞く話が、「どんな人でも来て欲しい。誰でもお客様になって欲しい」というものです。
しかし、ちょっと考えてみて下さい、例えば食事場所で”お寿司が食べたい”と思った時に、目の前に「寿司・天ぷら・カレー・ラーメン」と書かれている店と、「寿司」だけ書かれているお店とどちらを選びます?
また、何でもしようと思うと、それだけ準備も大変ですし、ロスも出ます。
大手の旅行会社ならともかく、小さな旅行会社は何かに特化する方が効率も良く、お客様にも喜んでもらいやすいのです。

コンセプトの基本は「STP戦略」

「STP戦略」と聞くと難しい話のように聞こえますが、これを読めば大丈夫、すぐに理解できます。

マーケティングでよく使われるフレームワークに「STP戦略」があります。
これは以下の3つから成り立っています。

  • S(セグメンテーション):市場を細かく分類する

  • T(ターゲティング):狙うお客様層を決める

  • P(ポジショニング):そのお客様にどう見られたいかを決める

たとえば、「高齢者向けの少人数温泉ツアー」を売りたい場合。

  • セグメンテーション:高齢者、関西圏、ネットよりチラシ派、バリアフリー重視

  • ターゲティング:70代前後の女性、孫世代との思い出作りがしたい人

  • ポジショニング:「あんしん・ゆったり・おもてなし」に特化した旅行会社

このように具体的にすることで、企画も広告もグッとお客様に届きやすくなります。

「コンセプト=想い」ではない

ありがちなのが、「自分のやりたいこと=コンセプト」と思ってしまうケースです。
これ、いくら言ってもこうなる方が多いんです。
確かに想いは大切です。
しかし、ビジネスとして成立させるには「お客様の悩みや願望に寄り添った設計」が不可欠です。

私の経験で言えば、母が「もう旅行はええわ、しんどい」と言ったことがきっかけでした。
ならば、「しんどくない旅行」「心が休まる旅行」を作ろう。
そこから「高齢者向け・ゆったり少人数旅行」というコンセプトが生まれました。

結果、「こんな旅行がしたかった!」という声を多くいただくようになりました。

お客様の「悩み」に耳を傾ける

良いコンセプトは、「お客様の悩みの言語化」から生まれます。

たとえば…

  • 「旅行は好きだけど、人混みが苦手」

  • 「団体行動が苦痛で、自由時間がもっと欲しい」

  • 「観光よりも、地元の人とふれあいたい」

こうした声を拾い上げ、「○○の悩みを解決する旅行会社です」と伝えることで、「あ、それ私のことだ!」と共感が得られます。

まだお客様がいない状態でも、どんなお客様が欲しいのか、そのお客様はどんな悩みを持っているのか?を想像してみて下さい。

ホームページも「コンセプト勝負」

今の時代、ホームページは会社の顔です。
しかし、どこにでもあるような「○○旅行。団体旅行、個人旅行、海外旅行…」という羅列ではまったく響きません。

「幹事さんも楽しめる、沖縄の団体旅行専門」
「高齢者の方も安心。トイレ近くの客室をお約束します」
「インスタでは味わえない“本当の京都”をご案内」

このように、“誰向け”か、“何を大事にしているか”がすぐ分かる表現を意識しましょう。

PUSHマーケティングでファンを作る

せっかく良いコンセプトがあっても、知ってもらわなければ意味がありません。
そこで活躍するのが「PUSHマーケティング」です。

メールマガジンやステップメールを通して、「悩み解決型」の情報を発信します。

  • 「高齢の親を旅行に連れていく時のポイント」

  • 「失敗しない社員旅行の行き先選び」

  • 「観光客が少ない静かな温泉地10選」

こうした有益な情報を発信することで、「この会社、信頼できそうだな」と思ってもらえるようになります。

PUSHマーケティングだけでも様々な形態・種類・手法があります。
また別のところで詳しくお伝えできればと思います。

「誰のための旅行か」を突き詰めよう

誰か特定の人のために、どんな体験を提供したいのか。
これが明確であるほど、お客様から「探してたのは、こういう旅行会社!」と言ってもらえるようになります。

私自身も、「京都発着の町内会旅行専門」「職人と出会う旅」「貸切バス予約専門」といった複数の明確なコンセプトサイトを持つことで、検索にも強くなり、顧客からの信頼も得られています。

最後に:コンセプト設計からすべてが始まる

旅行業の成功は、派手な広告や資金力ではなく、「お客様に寄り添ったコンセプト設計」から始まります。

そしてその設計を言葉にし、ホームページやチラシに反映させ、メールやSNSで育てていく。
これが「小さな旅行会社」の成功の王道なのです。

もっと具体的に知りたい方には、私が開催している【旅行会社起業塾セミナー】で、実例やノウハウを詳しくお伝えしています。ぜひ一度、参加をご検討ください。

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