旅行会社として知っておくべきバス会社選定(公示運賃・回送・配車・乗務規制)での要注意ポイントは?

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旅行会社をこれから起業しようとする方にとって、貸切バスの手配は一見シンプルに見えるかもしれません。
ですが実際には、公示運賃、回送、配車、乗務規制といった仕組みを理解していないと、見積の読み違い、赤字受注、当日の運行トラブルにつながることがあります。
この記事では、起業前に押さえておきたいバス会社選定の要注意ポイントを、実務目線でわかりやすく解説します。

公示運賃を理解しないと見積の比較を誤る

旅行会社をこれから起業しようとする人の中には、「バスの手配は見積を数社取って、一番安い会社にお願いすればよい」と考える方が少なくありません。
ですが、貸切バスの手配はそこまで単純ではありません。
むしろ、ここを甘く考えると、利益が出ない・当日トラブルになる・安全面で無理な行程を組んでしまうという問題に直結します。

とくに初心者が見落としやすいのが、公示運賃、回送、配車、乗務規制の4つです。

貸切バス運賃は時間制運賃とキロ制運賃で決まる

貸切バスの運賃は、単なる「目的地までの移動料金」ではなく、国の制度に基づいて、時間制運賃とキロ制運賃を組み合わせて計算する仕組みになっています。
しかもその計算は、営業所からの出庫・帰庫、つまり回送も含めて考える必要があります。
国土交通省も、貸切バスの運賃・料金制度は安全コストを適切に反映させるための仕組みであり、下限額の目安確認用シミュレーターも公表しています。

まず理解しておきたいのは、貸切バスの運賃は「何人乗せるか」だけで決まるわけではないということです。
制度上、運賃は時間制運賃とキロ制運賃を合算して計算します。
時間制運賃は、出庫前・帰庫後の点呼点検時間としてそれぞれ1時間、合計2時間を加え、さらに出庫から帰庫までの拘束時間をもとに算定されます。
しかも、走行時間が3時間未満でも3時間として扱うルールがあります。
キロ制運賃も、実際にお客様を乗せている距離だけではなく、営業所からの回送距離を含めた総走行距離で計算されます。
つまり、旅行会社が思っている以上に、「営業所の場所」と「配車の組み方」が料金に影響するのです。

公示運賃は単なる相場表ではない

ここで初心者が最初にハマるのが、公示運賃を“相場表”のように雑に理解してしまうことです。
貸切バスの運賃は、各運輸局が地域ごとに公示している範囲や基準に基づいて設定されており、近年も制度見直しが続いています。
2023年の見直しでは、従来の幅のある運賃制度から、基準額を下限額として明確に扱う方向が示され、2025年にも人件費水準の見直しが議論されています。
つまり、バス代は「昔より高くなった気がする」という感覚論ではなく、安全確保・人件費・運行維持を前提にした制度的な背景のうえで見なければいけません。
安すぎる見積だけに飛びつくと、後から追加費用が出たり、そもそも無理な条件の見積だったりすることがあります。

回送の考え方を知らないと原価計算で失敗する

次に重要なのが回送です。
旅行会社を始めたばかりの方は、どうしても「京都駅8時出発、18時帰着」のように、お客様が乗っている時間だけでバス代を考えがちです。
しかしバス会社から見ると、仕事はその前後から始まっています。
営業所から配車場所まで車両を回送し、運行後は営業所へ戻る必要があるため、その時間も距離もコストに入ります。
たとえば、集合場所の近くに見えても、実際にはバス会社の営業所が遠方にあれば、回送料が大きく膨らむことがあります。
制度上も、運賃は営業所の所在する出発地の運賃を基礎にし、出庫から帰庫までで計算する考え方です。
したがって、バス会社選定では「出発地に近い会社」ではなく、営業所の位置と配車効率まで含めて有利な会社を見なければなりません。

ここで実務上のコツを一つ挙げるなら、見積依頼のときに「お客様行程」だけでなく、配車場所・終了後の降車場所・待機時間・有料道路利用の想定・宿泊の有無まで最初から伝えることです。
情報が不足していると、バス会社は安全側に見て高めの見積を出すか、逆に仮置きの安い見積を出してあとで修正するかのどちらかになりやすいからです。
旅行会社側が行程の精度を高めるほど、バス会社も正確で比較可能な見積を出しやすくなります。
見積比較とは、単に金額を並べることではなく、同じ条件で比較できる状態を作ることなのです。

営業所の場所によってバス代は変わる

さらに見落としてはいけないのが配車です。
配車は単なる「何時にどこへ来てもらうか」ではありません。
バス会社側では、車両の空き、乗務員の出番、前後の運行とのつながり、営業所からの移動効率まで考えて配車しています。
そのため、同じ行程でも、出発時刻を30分ずらすだけで受けやすくなることもあれば、逆に朝が早すぎたり夜が遅すぎたりすると、前後の運行に支障が出て受注しにくくなることがあります。
起業したばかりの旅行会社ほど、お客様の希望をそのまま受け止めてしまいがちですが、実際には「バスが運行しやすい行程」に整える提案力が利益と安全の両方を左右します。

乗務規制を知らないと安全面でも見積面でも危険

そして最も注意したいのが乗務規制です。
2024年4月以降、バス運転者には改正後の改善基準告示が適用されており、拘束時間や休息期間などの基準が見直されています。
厚生労働省の資料では、バス運転者について1年の拘束時間は原則3,300時間以内、1か月は原則281時間以内とされ、貸切バス等では労使協定による例外の考え方も示されています。
また、勤務間の休息期間についても、継続11時間を与えるよう努めることを基本とし、9時間を下回らないといった整理がなされています。
つまり旅行会社が無理な早朝発・深夜帰着・連続運行を当然のように組むと、バス会社側で受けられない、あるいは交替運転者の配置が必要になる可能性が出てきます。

長距離・長時間運行では交替乗務員が必要になることもある

交替運転者の配置基準も、長距離・長時間運行では重要です。
国土交通省の資料では、高速道路の実車運行区間でおおむね2時間ごとの休憩確保や、実車距離に応じた休憩・交替の考え方などが示されています。
旅行会社がこの感覚を持たずに日程を組むと、「この行程なら1名乗務でいけると思っていたのに、実は2名必要で見積が大きく上がる」ということが起こります。
特に、遠方日帰り、夜間を含む移動、連日の長距離運行は、料金問題ではなく安全運行上の制約として最初から捉えるべきです。

バス会社選定で失敗しないための実務ポイント

では、起業準備中の旅行会社は何を実践すればよいのでしょうか。
答えはシンプルです。
第一に、バス代を“仕入原価”として甘く見ないこと。
第二に、見積依頼時点で行程条件を細かく整理すること。
第三に、金額だけでなく、営業所位置、回送条件、受注しやすい時間帯、乗務規制への適合まで含めて比較すること。
第四に、お客様へは「なぜこの金額になるのか」を説明できるようになることです。
バス手配に強い旅行会社は、ただ安く仕入れる会社ではありません。制度を理解し、安全と収益の両方が成り立つ形で提案できる会社です。

これから旅行会社を起業する方にとって、貸切バスの知識は単なる手配技術ではなく、経営の基礎体力です。
公示運賃を理解し、回送を読めるようになり、配車の現実を知り、乗務規制を前提に行程を組めるようになる。
その積み重ねが、無理な見積、赤字受注、当日トラブルを防ぎます。
バス会社選定で本当に大事なのは、「どこが安いか」ではありません。
どの会社なら、安全に、無理なく、継続的に仕事を任せられるかを見極めることです。
起業初期こそ、その視点を持っておくことが、長く信頼される旅行会社への第一歩になります。

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