
「旅行が好き」
「人を喜ばせる仕事がしたい」
「自分のアイデアを形にしたツアーを提供したい」
そんな想いから、旅行業での独立を考えている方も多いことでしょう。
私自身も、まったくの異業種から旅行業界に飛び込んだ一人です。
今回は、これから旅行業で独立を考える方に向けて、「最低限必要な資格」と「実際にやるべき準備」について、私の経験と知識をもとにお伝えしていきます。
目 次
1. 旅行業は「資格ビジネス」
旅行業は「資格ビジネス」とも言われるほど、事業開始にあたって取得・登録が必須となる資格や許可があります。
特に重要なのが「旅行業務取扱管理者資格」と「旅行業登録」です。
1-1. 旅行業務取扱管理者とは?
この資格は、旅行業者として営業する上で義務づけられている国家資格です。
「国内旅行業務取扱管理者」と「総合旅行業務取扱管理者」の2種類があり、国内旅行のみを扱う場合は前者でOKです。
この資格を有する者が、常勤で営業所に1人以上いなければ、旅行業の登録ができません。
私は独立前にこの資格を取得できませんでしたので、資格を持っている人を雇いうことにしました。
その後、勉強し、自分でも資格を取得しました。
学習内容は旅行業法規、国内・国外の観光地理、運送や宿泊に関する知識など多岐にわたります。
独学でも可能ですが、通学や通信講座を活用する方がスムーズです。
1-2. 旅行業登録の種類と手続き
旅行業には、「第一種旅行業」「第二種旅行業」「第三種旅行業」「地域限定旅行業」の4種類があります。
それぞれできる範囲が異なります。
詳しくは下の図を見て下さい。
個人や小規模事業者が旅行会社を立ち上げる際は、取り扱える範囲が限られるものの、手続きが比較的簡単で開業資金もそれほど高くない「第三種旅行業」や「地域限定旅行業」が一般的です。
登録には、下記のような条件が必要になります。
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旅行業務取扱管理者の設置
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最低資本金(300万円以上が目安)
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営業所の設置
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旅行業協会への弁済業務保証金の供託、もしくは協会への加入
詳細は各都道府県の観光課が窓口です。行政書士に依頼することも可能ですが、私は自分で申請しました。
丁寧に対応してもらえるので、まずは直接相談することをおすすめします。
出典:観光庁ホームページより
1-3. 添乗員資格
添乗員資格「旅程管理主任者」について
旅行会社の企画するツアーに同行し、お客様の旅程を管理・案内するために必須となる資格が「旅程管理主任者」です。一般的に「添乗員資格」と呼ばれているのは、この資格のことを指します。
旅程管理主任者とは?
旅程管理主任者は、旅行業法に基づき、企画旅行(パッケージツアーなど)において、旅行者が安全かつ円滑に旅行できるよう、旅程の管理や必要な手配、指示を行う責任者です。この資格がなければ、原則として添乗員としてツアーに同行することはできません。
資格の種類
旅程管理主任者資格には、添乗できる範囲に応じて2つの種類があります。
海外のツアーに添乗するためには、「総合旅程管理主任者」の資格が必要です。
資格取得までの流れ
旅程管理主任者の資格は、国家試験ではなく、観光庁長官の登録を受けた研修機関が実施する「旅程管理研修」を修了することで取得できます。資格取得までの主な流れは以下の通りです。
- 旅行会社への所属または派遣登録 旅程管理主任者証は、旅行会社が発行するため、まずはいずれかの旅行会社に所属するか、添乗員派遣会社に登録する必要があります。
- 旅程管理研修の受講・修了 観光庁長官登録研修機関が実施する研修を受講し、修了試験に合格する必要があります。研修では、旅行業法や約款、添乗実務に関する知識を学びます。
- 国内旅程管理主任者研修: 通常2日間程度の研修です。
- 総合旅程管理主任者研修: 国内の研修内容に加え、海外添乗実務や添乗英語などが含まれ、通常3日間程度の研修となります。
- 添乗実務経験 研修修了の前後1年以内に1回以上、または研修修了後3年以内に2回以上の添乗実務を経験する必要があります。これは、有資格者である先輩添乗員に同行する形(補助添乗員)や、研修機関が実施する実務研修に参加することで経験を積みます。
- 旅程管理主任者証の交付 上記1〜3の要件を満たすことで、所属する旅行会社から「旅程管理主任者証」が交付され、晴れて添乗員として一人でツアーに同行できるようになります。
「旅行業務取扱管理者」との違い
旅程管理主任者と混同されやすい資格に「旅行業務取扱管理者」があります。これは国家資格であり、その役割は異なります。
- 旅程管理主任者: ツアーに同行し、旅程を管理する「添乗員」のための資格。
- 旅行業務取扱管理者: 旅行会社の営業所ごとに選任が義務付けられており、旅行契約に関する事務や企画・手配などを管理・監督する「責任者」のための資格。
簡単に言えば、ツアーの現場で活躍するのが「旅程管理主任者」、営業所で旅行業務全体を管理するのが「旅行業務取扱管理者」となります。
これから添乗員を目指す方は、まず「国内旅程管理主任者」の取得から始め、経験を積んだ後に「総合旅程管理主任者」へステップアップするのが一般的なキャリアパスです。
2. 独立前にやるべき3つの準備
資格や登録が済めば、旅行業者としてのスタート地点に立ったことになります。
しかし、そこからが本当の勝負です。
独立前にやっておくべき3つの準備をご紹介します。
2-1. 商品コンセプトの明確化
「どんなお客様に、どんな旅行を、どのように届けるのか?」というコンセプトは、すべての活動の軸となります。
マーケティングで言えば「STP戦略(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)」を意識することが重要です。
私の場合は、「高齢者向けのゆったりした京都発の少人数旅行」というニッチな市場にフォーカスしました。
大手にはできないきめ細やかな対応が喜ばれ、リピーターにつながりました。
その後は、拡大の為コンセプトを増やす形で、様々な旅行商品に取り組み、それぞれに喜ばれる商品作りができるようになりました。
2-2. ホームページと集客導線の整備
ホームページは今や必須の営業ツールです。
特に個人や小規模の旅行会社にとっては、名刺以上に大切です。
まずは見てもらえる工夫をすること。
今でもSEO対策は最重要ととらえています。
その後にPUSHマーケティングを活用して、お客様のメールアドレスを取得し、ステップメールなどで信頼を構築する方法が効果的です。
SNSが得意な方はSNSによる集客も良いと思います。
頻繁な更新が苦手な方には向きません。
2-3. モデルツアーの試作とフィードバック収集
最初に企画する旅行商品は「モデル商品」となります。
これを少人数でも実施し、お客様からの感想や要望をフィードバックとして商品に反映させていきましょう。
私は知人や家族を招いてモニターツアーを実施し、写真や感想を記録。
これが次の営業時の資料となり、大きな武器になります。
3. 独立後に差がつく「見せ方と伝え方」
独立直後は、商品力以上に「信頼」が重要です。
信頼は“見せ方”で伝えることができます。
3-1. ホームページのSEOと構成
「京都 団体旅行」「沖縄 社員旅行」といった具体的なキーワードで上位表示されるよう、SEO対策が必要です。
検索されやすいワードを調査し、記事タイトルや本文にしっかり入れましょう。
また、「誰のどんな悩みを解決するか」を明確にすることで、訪問者の信頼が得られます。
3-2. メディアとの連携
マスメディアに露出することも信頼性アップにつながります。
プレスリリースの出し方や、地元紙・ラジオ局へのアプローチ方法も知っておくと役立ちます。
4. 忘れてはいけない「法律」と「契約」
旅行業は法律に基づいた契約が不可欠です。
旅行業法により、契約書面や取引条件説明書面の交付が義務付けられており、誇大広告や不当表示は禁止されています。
また、インターネット上での申し込みにもガイドラインがあり、これを守らないとトラブルの原因になります。
5. 最後に:失敗しないためには「学び続けること」
私自身、独立して20年近く経ちますが、今でも「学び」は欠かせません。
旅行業界は法改正やニーズの変化が激しいため、常に最新情報に触れておく必要があります。
その一環として、私が主催している「旅行会社起業塾セミナー」では、旅行業を1から学び、失敗しないための実践的なノウハウをお伝えしています。
ご興味のある方は、ぜひ一度セミナーにご参加ください。
きっと、あなたの一歩を後押しする時間になると思います。