なぜ異業種出身の旅行会社は、最初につまずきやすいのか?
異業種から旅行会社を立ち上げた方は、営業力や企画力、ITスキルなど、非常に高い能力を持っているケースが少なくありません。
それにもかかわらず、開業後しばらくして「思ったより売れない」「仕事はしているのに利益が残らない」と悩む人が多いのが現実です。
その大きな理由は、能力不足ではありません。
つまずきの原因はスキルではなく、スタート時点の前提のズレにることが多いです。
目 次
ワナ①「手配ができれば仕事になる」という思い込み
旅行業に入ると、最初に覚えるのが宿泊施設や交通機関、体験コンテンツの手配です。
そのため、「手配ができるようになれば仕事になる」と考えてしまいがちです。
しかし、旅行会社の仕事は手配業ではありません。
手配はあくまで手段であり、本質は商品を設計し、顧客の課題を解決することです。
仕入れ先を確保することと、売れる商品を作ることはまったく別物です。
どんな人の、どんな悩みを解決する旅行なのかが明確でなければ、単なる素材の寄せ集めになってしまいます。
旅行会社が提供している本当の価値は、移動や宿泊の手配ではなく、「目的を実現するための設計」と「面倒を引き受けること」にあります。
ワナ②「良い商品を作れば自然に売れる」という発想
異業種ビジネスでは、良い商品を作れば口コミや紹介で広がっていくケースもあります。しかし、旅行商品ではこんな風に簡単に広がっていくことは極めて稀です。
どれだけ魅力的な内容であっても、検索されず、比較されず、検討されなければ売れることはありません。
異業種出身者が陥りやすいのが、「まず商品を作ってから売り方を考える」という順番です。
しかし起業初期に必要なのは、商品よりも先に導線です。
誰が、どんな場面で、どんな言葉で検索し、どこから自社にたどり着くのか。
この流れを設計せずに商品を作っても、売れない状態が続いてしまいます。
ワナ③「業界価格に合わせるのが正解」という思考
旅行業界に入ると、周囲の価格帯がすぐに見えてきます。
そのため、「相場に合わせないと売れないのではないか」と考えてしまいがちです。
しかし、業界価格に合わせた瞬間から、経営は一気に苦しくなります。
なぜなら、既存の旅行会社と同じ原価構造、同じやり方で戦うことになるからです。
特に小規模な旅行会社や一人で運営する事業者が、同じ土俵で価格を合わせてしまうと、利益が残らなくなります。
原価構造を真似するのではなく、自分の事業規模に合った利益構造を作ることが重要です。
小さな旅行会社こそ、価格ではなく、専門性や対応力、企画力で価値を作る戦略が求められます。
ワナ④「旅行会社は何でも扱える方が強い」という誤解
旅行業界では、何でも扱える総合型の会社が多く存在します。
そのため、「自社も幅広く対応できた方が有利」と考えてしまう人は少なくありません。
しかし、総合型が成立するのは、人員や実績、営業基盤を持つ会社に限られます。
起業直後の旅行会社が同じ戦い方をしても、存在感を示すことは非常に難しいのが現実です。
一方で、専門分野に特化した旅行会社は、小規模でも選ばれる理由を作りやすくなります。
社員旅行、教育旅行、地域体験、インバウンド、視察研修など、テーマを明確にすることで、比較対象から外れやすくなるのです。
異業種出身者こそ、前職の業界や人脈と掛け合わせた専門ポジションを作ることが、大きな武器になります。
ワナ⑤「ホームページとSNSがあれば集客できる」という勘違い
最近は、ホームページとSNSを整えれば集客できると考える人が増えています。
しかし、これは集客ツールと営業活動を混同している典型的なパターンです。
ホームページやSNSは、集客そのものを生み出す装置ではなく、興味を持った人を後押しするための仕組みです。
つまり、入口がなければ意味がありません。
旅行会社に必要なのは、検索、紹介、営業、人脈、地域連携など、複数のチャネルを組み合わせた集客設計です。
起業初期に優先すべき行動は、発信の量を増やすことではなく、現実的に見込み顧客と接点を作れる方法を選ぶことです。
ワナ⑥「旅行業界のやり方に合わせなければならない」
業界に入ると、「それは業界的に難しい」「普通はそうしない」と言われる場面に数多く出会います。
しかし、業界慣習と経営合理性はまったく別物です。
異業種から持ち込めるノウハウは本来たくさんあります。
営業管理、顧客管理、業務の仕組み化、ITツールの活用、マーケティング手法などは、旅行業でも十分に活かせます。
業界に合わせることは必要ですが、自分の強みまで捨ててしまう必要はありません。
むしろ、業界に染まりすぎることで、異業種出身者としての最大の武器を失ってしまうケースも少なくありません。
ワナ⑦「最初は我慢して続ければ何とかなる」という考え
起業初期は苦しいものだ、という考え方も大きなワナです。
確かに簡単な事業ではありませんが、旅行業は努力と成果が必ずしも比例しない構造を持っています。
売れない商品を、売れない導線のまま頑張り続けても、結果は大きく変わりません。
重要なのは、撤退か継続かではなく、軌道修正ができているかどうかです。
最初の半年で見るべき指標は、売上よりもむしろ、
・どんな顧客から問い合わせが来ているか
・どの導線から接点が生まれているか
・どの商品が反応されているか
といった事業の方向性を判断するための情報です。
異業種参入者こそ持つべき“旅行業経営の視点”
異業種参入者が意識すべき最大のポイントは、現場目線から経営目線への切り替えです。
手配や対応に追われるだけでは、事業は安定しません。
旅行業を「仕事の集合体」としてではなく、「ビジネスモデル」として捉えることが重要です。
誰に、どんな価値を、どの導線で届け、どこで利益を生むのか。
この構造を意識するだけで、行動の優先順位は大きく変わってきます。
まとめ|業界常識を疑える人が、実は一番伸びる
異業種出身であることは、決してハンデではありません。
むしろ、旅行業界の常識を当たり前だと思わずに疑える立場こそ、大きな強みです。
手配ができることよりも、売れる仕組みを作れること。
業界価格に合わせることよりも、価値で選ばれること。
何でも扱うことよりも、専門で選ばれること。
遠回りをしないために必要なのは、業界に合わせることではなく、自分の強みと旅行業を正しく組み合わせる視点です。
業界常識のワナに気づいた瞬間から、異業種参入は大きな武器に変わります。